文系出身者の建築構造計算 GenS Weblog

建築構造計算に関する情報 と 文系出身のGenSが極めて私見を綴ったWeblogです。たまに趣味ネタも書いてます。


回転慣性の計算(今頃思うこと)

質量分布が均質な床の回転慣性モ−メントを精算値として,過去にフリーウェアとともに紹介したが,建物には壁も柱もあるから,「重心〜節点間距離の二乗に節点重量を乗じる方法もあながち間違いではないな」と今頃になって思う。

少なくとも「精算値」という言葉は語弊があると考えるので訂正したい。

やはり,建物の実情に応じて適宜,人が判断することが何より重要だと思う。

土の非線形性をHDモデルで模擬してみた

最近では,Hardin-Drnevich(HD)モデルが土の動的変形試験結果と良い対応を示すと言われているが,告示波作成にあたって確かめてみた。

G-Gammmah-Gamma



これはある粘性土層のG/Go〜γとh〜γであるが,ピンク色の線がG/Go=0.5でのγ=5.51E-02%,hmax=18.41%をパラメータとして与えたHDモデルのラインで,そこに動的変形試験結果の5サイクル目を白抜きで,10サイクル目を塗り潰しでプロットしたものである。(HDモデルのhminは2%)

私は確かに良い整合だと思う。なるほどぉ〜!
(下図の縦軸がG/GOになっているが,減衰定数hの誤りである)

回転慣性(rotation inertia)の計算

一般に回転慣性(以下,単にIと記す)が必要になるのは,特に床のIに限定すれば,捩れの自由度を考慮した振動解析をするときだと思います。

私も過去に数え切れないほど計算してきました。

しかし,今頃になって「大昔に行った計算はあれでよかったのか?」と疑問を抱くようになり,近日中に久しぶりの捩れ振動解析を行うこともあって,今更ながら検証を行いました。

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主架構とタワーパーキングの衝突解析

超高層建築物の中には,主架構の中にタワーパーキング(以下,TPと略す)を内蔵する形式の建物が少なくありません。

私が過去に解析に携わった建物はすべて,TP作動時の振動や騒音を建物に伝えないようにTPが内部で自立しており,主架構とは数cm程度の水平クリアランスを持っている形式で,水平力に対しては抵抗せずに主架構に預ける形式でした。
よって,TP自身の水平剛性は小さく,主架構よりかなり長い固有周期を持ちます。

このような場合,設計には主架構だけの剛性とTP荷重を含む質量による応答解析結果を用いますが,この前提条件を成立させるには,地震時に防振ゴムのクリアランスを越えて互いが接触しても,主架構とTPの間でのせん断力の移行がほとんどなく(瞬間的な加速度応答は出ますが),またTPは主架構の変形に十分追従可能な構造であることを証明する必要があります。

もし,TPの水平剛性が高く,防振ゴムに接触した際に主架構からTPへ無視できないほどのせん断力の移行があれば,応答解析の前提が崩れるからです。

高層評定や免震評定の場では,TPを内蔵する場合は前述の前提条件が成立することの証明が不可欠のようです。
検討せずに委員会にかけると,次の部会までの短い時間で慌てて追加検討を行うはめになります。

クリアランスを開けて離れている構造物同士が接触した際の解析を行うことから,私は勝手に衝突解析と呼んでいますが,要するに以上のような応答性状の異なる二つの構造物の連成解析のことを指します。
私が最も得意とする解析業務のひとつです。

さて,実際に衝突解析を行おうとすれば相応の道具が必要となります。
私の手持ちの道具でも質点系並進解析プログラムであるSS21/DynamicPROでは解析できません。上階でのツインタワー形状程度は扱えますが,質点iの上に質点jがあり,その間に要素があることを前提としているからです。
また,主架構がFrame1でTPがFrame2,これらを接続する要素としての防振ゴムをFrame3とするような複数フレームの定義が出来ないからです。

そこで,質点と要素の関係性のデータを記述すれば形状に一切制限のないSS21/SuperDynamicPROの出番となります。
一般には捩れの自由度を考慮したいときに使うイメージですが,それだけじゃあまりにも勿体無い

過去のブログでも書きましたが,SuperDynamicPROはバッチ形式でコマンドを記述する必要があるため入力には手間と時間がかかりますが,極めて自由度の高いプログラムです。
一般には利用者も出番もそれほど多くないかもしれませんが,イザっ!というときには心強い味方になってくれます。

長年付き合ってきた建築士のひとりは,私がその自由度の高さを証明してみせると,「まるで背中に羽が生えて自由に空を飛べるような気分です」という忘れえぬ名言を残しました(笑)。

このSuperDynamicPROを自在に扱えることが,私のノウハウであり技術の一部ではありますが,建築士をサラブレッドに例えると,自由に空を飛べるペガサスのようなサレブレッドがもっと増えると嬉しいですから,ロバなGenSは出来るだけオープンにして行きたいと思っています。

解析協力も喜んでいたします。以降はご自身で出来るように丁寧に解説もいたします。

ただ,並進解析のDynamicPROは使い勝手の良さと後発プログラムならではの先進性から,事実上No.1のシェアを誇る振動解析プログラムですが,SuperDynamicPROは昔ながらのバッチ形式の入力で,マウスでCAD的に入力することに慣れてしまった若い世代にはどうも敷居が高いようで,これを所有する方は極めて少ないです。
だから,このブログでコマンドの記述例なんかを事細かく解説しても,それで皆さんのお役に立てるわけでも面白いわけでなさそうですので,こんなことも出来ます,あんなことも出来ますといった,イザっ!という場面での解析事例を紹介して行きたいと思います。

一応,続きに防振ゴムの復元力特性の設定例と応用例を示します。もしご興味があればどうぞ!
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魚骨モデルを解析するには・・・

まず,曲げ非線形性を扱えなければならない,という大きな壁がありますね。
梁降伏機構を扱うということは,梁の曲げ降伏を考慮するということであり,それを解析で模擬するには,曲げ非線形性を扱えなければどうしようもありません。
ということは,手持ちの道具では当面無理であると気付きました。多くの曲げせん断棒モデルの振動解析ソフトは,曲げを弾性と仮定してせん断変形に対して非線形性を考慮しています。
やはり,質点系でも曲げ非線形性を考慮できるツールが必須となりますね。
あとは部材レベルの解析ツールを用いるか,または魚骨モデルを想定したツールが必要ですね。
ただ,構造業界が質点系を卒業し,当たり前に部材レベルの応答解析を行う時代に至る間に,魚骨モデルが設計現場で一般的なモデル化手法になるのか,一部の先生方の研究で終わるのか,今後も注視してゆきたいと思います。

魚骨モデル(Fish bone model)

「魚骨モデルによる振動解析をしたい」って相談を受けましたけど,「手持ちの道具で」という条件,つまりバネマスモデルの道具で擬似的にでも何とか表現できないか?という相談です。
私,今のところアイデアがまったく浮かびません。やはり梁材を表現しないといけないし,質点の回転変位の考慮が不可欠ですから,水平変位に縮約された剛性マトリクスを用いた応答解析では,如何に曲げせん断棒に置換しても無理のようにも思うのですが,いきなり部材レベルのツールでやるっていうのも時期尚早な気もしますし,誰かいいアイデアをお持ちでないですか?
なんかTwitterへのつぶやきみたいですね(笑)。

立て続けに二本電話があって

電話の主がどっちも同じ姓でIさんです。

最初のIさんとこの忘年会は先週呼んでもらって終わってるし,後のIさんとこは来週決まってるし参加の返事もしてるから,こりゃ忘年会の誘いじゃないゾっ!仕事の依頼に違いない!と思いきや,ともに振動解析に関わる質問でした(笑)。
PC構造の履歴タイプや地盤の卓越周期の計算方法とか,絶対加速度じゃなくて相対加速度の話とか,質問っていっても明確に答えがあるようなことではなくて「GenSはこう思いますよ」みたいな感じでしたね。

新しい仕事の依頼じゃなくて残念ですが,時折GenSに電話くれるだけでも嬉しいですね。
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