文系出身者の建築構造計算 GenS Weblog

建築構造計算に関する情報 と 文系出身のGenSが極めて私見を綴ったWeblogです。たまに趣味ネタも書いてます。


プレストレストコンクリート

ブログの更新は,仕事に疲れた晩にしようと思うと億劫になるので,始業前がベストだと最近思います。

さて,私のメールアドレスをご存知の方はおわかりでしょうが,苗字の前に“pc”が付きます。携帯電話もドメインは異なりますがアドレスは同じです。

元々ソフト屋ですから“パソコン”の略だと思われてる方がいるかもしれませんが,これは“プレストレストコンクリート(Prestressed Concrete Structures)”の略のつもりなんです。決してパソコンじゃありません。

その理由は,建研が独法じゃなくて建設省建築研究所だった時代に,加藤さんの名刺に記してあるアドレスを見て「格好いい!」って思って真似したんです。もちろんあの「岡本・加藤モデル(PSモデル)」の加藤さんです。

思いっ切り加藤さんのパクリですが,その当時は「PCをライフワークにするゾっ!」という気持ちをアドレスに込めたつもりだったんです(苦笑)。
私には,コンクリートの高い圧縮強度をほとんど有効に使えていないRC造や,一番効かない断面中央に鉄骨を配するSRC造を,なぜPCが凌駕しないのか不思議でなりません。コンクリートボリュウムも骨材量も少なくて済むはずなのに・・・。ロングスパン梁だけがPCの出番じゃないはずです。
今でも建築におけるPCが鉄筋コンクリート造全体に占めるシェアは数%でしょう。一割にも届かないはずです。

私には,ポストテンションによる不静定二次応力を算定するための荷重項(固定端モーメントと平均軸力)と,PC部材の終局耐力を算定するプログラムを開発した経験があります。
といっても長らく営業マンでしたし,このときもシステムサポートを担当する部署におりましたので,コーディングは開発部のプログラマーに任せて,私はSEとしてプログラムの設計を行いました。

これはもう10年以上も前のことですが,建研主導で産学協同のPC共同研究が行われ,その中の設計指針作成ワーキンググループ(以下,WG)の下に電算サブWGが設置されました。
このWGでは,PC普及の弊害になっているのは,学校教育や指針・規準の整備だけでなく,設計支援ツールが少ないことも理由のひとつと考え,設計支援ツールを提供することを目的にしていました。
そこでソフトベンダーにも参加要請があり,当時はまったくPCは未経験で未知の世界でしたが,私が運よく担当させていただけたんです。本当にラッキーでした。

この共同研究では,60mまでの高層PC建築物にも対応可能な設計指針を作成することを目的にしており,従前の略算式による終局強度の算定ではなく,改定されたばかりのPC規準に示される,ACI規準に基づくストレスブロック法による終局曲げ耐力と,トラス・アーチ理論による終局せん断耐力の算定が出来るツールを作成することになりました。

あれから十数年・・・
あのプログラムは,総発売元となった某社団法人からもその痕跡が消えてなくなり,幻のプログラムとなってしまいました。一時はPC専業者さんにも使っていただき,それなりの評価もいただきましたが,やはりプログラムはその時代時代のニーズに柔軟に対応し,不具合があれば修正しメンテナンスされて行かなければ,決していいプログラムにはなりえません。

あの時代の物凄いエネルギーが現在に繋がらず,明日へ継承されて行かないことは寂しい限りです。
独りになって,私自身もPCに携わることはほとんどなくなりました。岡本・加藤モデルを使った応答解析をしたことが一度あるだけです。それも部材の設計はすべて専業者さん任せで,構造事務所にもPCのノウハウは一切と言っていいほど残りません。

一般に広く普及したようにも,安くなったようにも思えません。
新規参入業者が増えたようにも,新たにPCへ挑戦する構造事務所が増えたようにも思えません。そういう私自身も一人では何も出来ませんから,独立後に何かしたかと問われれば何もしてません。
これじゃアドレスの“pc”が泣いてますよね。

この手でもう一度使えるプログラムを作りたいと心のどこかで思っています。しかし,如何せんプログラミングが得意な人間ではないので手が動きません。どうしても誰かの協力が必要です。

今の私に出来ることは,おもちゃみたいなEXCELシート程度かもしれませんが,出来るところから始めたいと思います。

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