文系出身者の建築構造計算 GenS Weblog

建築構造計算に関する情報 と 文系出身のGenSが極めて私見を綴ったWeblogです。たまに趣味ネタも書いてます。


師匠からの電話

昨日,しばらくご無沙汰していた師匠から電話を戴きました。

内容は,お使いになられている一貫構造計算プログラムの処理内容に関することでしたが,メーカーに聞こうと思ったらサポートセンターの受付時間を過ぎていたため,私の顔を思い出していただいたようです。

理由はともあれ,私を頼っていただけたことが嬉しいです。

でも,私が普段使わない機能に関するご質問で,私にはまったくわからなかったので,詳しい人間に助けてもらって何とかお返事することができました。

お急ぎのご様子でしたので,昔話などは出来ませんでしたが,私の脳裏には走馬灯のように師匠との思い出がグルグル回っていました。

ずっと先生と呼ばせていただいていたので先生と記しますが,先生は私にとって「構造」の師であるとともに,「酒」の師でもあります。ご指導いただいたことで胸に刻まれていることは,後者の方が多いかもしれません(笑)。

エピソードをひとつ話します。

私がまだサラリーマン時代で今から10年ほど前のことです。たしか東京へ出張する前日だったと思います。

まだ陽の高い時間でしたが,「今,北新地の○○っていうクラブに居るからすぐ来い!」って電話がありました。私は急いで仕事を片付け,地図を片手にお店を探しました。

着いた時刻はたぶん6時過ぎだったはずです。店に入ると,そこには先生と私の後輩営業マンの二人しか客はいません。なのに女の子は全員揃ってます。まさに貸切状態です。

後輩が営業に伺った際に私の話になってお誘いいただいたようです。二人は陽の高い時間から呑んでの二次会だったようですが,聞けば8時開店のお店を6時から開けさせたっていうんです。どうりで貸切状態のはずです。それにクラブが陽のあるうちから開店しているイメージもありませんもんね。

ご挨拶もほどほどに駆けつけ三杯お酒をいただいた後,「お前何も食ってないやろ?」「ねぇちゃん,こいつに寿司とったってくれや!」と食べきれないほどのお寿司をいただいて,8時過ぎまでは両手に華どころかクラブの綺麗なお姉さま方に囲まれてハーレム状態です。

すっかり酔いもまわってお開きの時間です。
先生が店に用意させていた手土産を戴いて,「これはお前にやないぞ!帰って奥さんに渡せ!」って言われました。

北新地は東京でいえば銀座と同じ高級店が軒を連ねる歓楽街です。サラリーマンの安月給で遊べるところじゃありません。
結局,全部ご馳走になったうえに妻に土産までいただいて,別れ際の先生の一言が忘れられません。

「電算機の電源入れっぱなしやから,事務所戻って仕事するわ」ですから(笑)。

仕事着に草履履きの先生の後ろ姿が見えなくなるまで,何度もお辞儀しながら見送りました。

その後も,クラブをハシゴするなど,先生との酒の席での思い出は尽きません。
でも,先生の本当に凄いところは,いつも誰かを喜ばせるための「酒」であること,そこに極め細やかなお心遣いを感じることです。

「いくら高級な店で接待しても,帰りに自腹でタクシー乗って帰らなあかんねんやったら,それは接待にならんゾ!」「するんやったら最初から最後までやらなあかん。一円も相手に出させたらあかん!」

独立してはじめて自分の金で「接待」というものをしたときは,この教えを胸に一生懸命に師匠を真似てみました。

呑兵衛ばかり5名で,電車があるうちには帰りそうにないお客様でしたので,二次会あたりでさりげなく「ご自宅はどちらですか?」と聞き出して,帰りにお渡しするタクシー代の計算をしてました。足りないんじゃないかと不安だったんです(苦笑)。

夜中の三時頃に,全員に不足ないタクシー代をお渡しすることができ,私の初接待は無事に終了しました。

後日,領収証と一緒にお釣りを私に返そうとする方も居て,私は「少ないですが小遣いにでもしてください」と受け取りませんでしたが,本当に真面目な方々だと思いました。聞けば,食事に誘われて帰りのタクシー代まで貰ったことは,過去に一度もなかったそうです。

その会社様とは今もずっと仕事のご縁があり,忘年会その他の社内行事にも呼んでいただいたりして,こっちが全部ご馳走になってしまうこともしばしばですし,プライベートでも一緒に遊んだりしてます。

接待したから仕事をいただけるわけではありませんが,私という人間を知っていただくことができたと思いますし,こちらもお客様のお人柄を知るよい機会となり,以後の関係が深まったことは間違いありません。

もし先生の教えがなければ,結果的に接待にならない接待をしてしまったと思います。

昨日は,そんな師匠からの一本の電話で,色々なことを思い出しました。

同時に,そんな師匠に何のお礼もできていない自分が情けなく思います。

昨日の回答がお役に立ったのかも不安です。

さっそく電話してみようと思います。

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