文系出身者の建築構造計算 GenS Weblog

建築構造計算に関する情報 と 文系出身のGenSが極めて私見を綴ったWeblogです。たまに趣味ネタも書いてます。


ふと思い出した

かれこれ15年くらい前になるが,ある大学教授の研究の手伝いで,コンクリートや鉄筋の強度,かぶり厚その他のばらつきを考慮して,梁降伏形の崩壊メカニズムを保証するにはどの程度の柱梁耐力比が必要かを試算した結果は、1.5倍程度というものだった。

そこでふと思う。実際の地震動は,Push-Over解析のような片押しの静的外力ではなく動的な交番荷重だし,上下動も加わるから,あの試算が無意味とは言わないまでも,我々は崩壊メカニズムなんてまったく保証できてないんじゃないかなぁ?

結局は,静的な解析結果で動的な実現象を占ってるわけだが,保有水平耐力計算はある条件下における仮定の計算であって,そこに「本当は?」という感覚を持ち込むとおかしなことになる。法や規準・指針の規定と,動と静のリンクは分けて考えるべきだろう。

極めてシンプルな前提条件から始まった保有水平耐力計算に「本当は?」という感覚を妙に持ち込んだ結果複雑化し,他人の設計した建物を計算し直したらまずNGになる現状を生んだのではないか。OKを出すには同ソフト・同条件で再計算するしかなく,一般解を得ていないのではないか。

その教授の言葉で印象的だったのは,「梁降伏した建物を実際に見たことある?」「スラブは波打つように割れてそりゃ酷いもんよ」「倒壊することなく人命を保護できれば,設計通りの崩壊形でしたとお施主さんに言える?」私「・・・」

Comments

Comment Form

Trackbacks